寺葬再生。古くて新しいお葬式のカタチ。

(2016年10月23日 更新)

1年ぶりのお寺MEETINGは、11月11日、「寺葬再生」を取り上げる。

昭和の時代までお葬式は、菩提寺で執り行うのが一般的であった。血縁や地縁が健在だったこの頃、寺は生老病死の場として人々に親しまれてきた。

バブル崩壊以来、デフレ現象とともに葬儀の変容が加速して、家族葬や直葬、首都圏では一日葬など葬儀社主導の新しい形態が一気に浸透した。そこから派生して、お布施の相場や派遣僧侶の問題が続々と噴出してきた。

今や都市部のお葬式の8割が葬儀社の式場で行われるが、それはただ場所が変わっただけでなく、その本来の意味や価値の変容を意味している。日本人の死生観で支えられてきた伝統文化が、効率や価格を優先する市場経済に席巻されたというべきだろうか。

お寺の未来の「寺葬セミナー」が顕著だが、2010年代の半ばを過ぎて、若手僧侶の中に、再び寺葬の再生を目指す動きがある。むろん、昭和時代の単純な復活ではない。当時を知らない若手僧侶がプランする寺葬は、むしろミニマムな時代だからこそ新しい着想と役割意識に富んでいるといっていい。

その最たる指向性が、葬儀社抜きで、葬儀を手作りするという発想である。その作法についてはまた稿を改めるが、通夜から本葬まで2日間をじっくり遺族に寄り添うそのスタンスは、昭和の席貸しとは違って、葬儀のもうひとつの本質「グリーフサポート」を取り戻そうという試みである。本堂を使えば、祭壇はいらない。お寺のスタッフが葬儀にかかわれば、葬儀自体の透明性や納得性は劇的に高まるはずだ。

昭和の時代、「葬儀執行」は俗事と軽んじてきた歴史がある。それを敢えて引き受けるところに、私は、「社会貢献としての葬儀」の本質が窺えると思う。

当日は、お寺の未来の代表理事井出氏からなぜ今、寺葬なのかを、宗教社会学者の猪瀬氏からは伝統の変容と再生について、聞く。

アウエー(式場葬)から、ホーム(寺葬)へ。「寺院消滅」といわれる現代、寺葬のリバイバルをひとつの契機として、古くて新しいお寺と人々の関係を見直していきたい。

タイトル 〈寺葬〉リバイバルプラン
〜古くて新しいお葬式のカタチ
日時 2016年11月11日(金)18:00開会〜20:30閉会 
会場 大蓮寺(應典院隣接)
ゲスト 井出 悦郎
1979年山形県生まれ。一般社団法人お寺の未来代表理事。東京大学文学部中国思想文化学科卒業。東京三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)等を経て、ICMG社で一線の経営コンサルティングに従事、2011年、一般財団お寺の未来を設立、代表理事に。「未来の住職塾」では全体プログラムを設計、2016年から寺院プラットフォームまいてら事業をスタート。著書に「お寺の教科書」。
猪瀬優里
1974年生まれ。龍谷大学社会学部准教授。日本学術振興会特別研究員を経て、北海道大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(行動科学)。北海道大学院文学研究科助教を経て現職。著書に「信仰はどのように継承されるか」、共著に「ジェンダーで学ぶ宗教学」「カルトとスピリチュアリティ」「社会貢献する宗教」「人口減少社会と寺院」等。
モデレーター 秋田光彦
参加費 1,000円
申し込み 應典院 info@outenin.com