出家詐欺

(2014年04月30日 更新)

 出家詐欺をご存知だろうか。NHKのクローズアップ現代で取り上げていた。
 多重債務者に出家させ、戸籍の名前を変えて、本来うけられない融資をだまし取る。宗教法人を舞台に、闇金融業者などが暗躍する新たな詐欺の手口。ブローカーは「宗教の力は偉大」とうそぶく。「不活動法人」問題は知っていたが、僧侶に化けて闇ビジネスにはめられるとは…知らなかった。
 番組ゲストの中島隆信慶應義塾大学教授も指摘していたが、とくに由々しき問題は、「得度」という宗教儀礼が悪用されたことだ。どんな名前の知れた悪人でも、師匠がいて、宗務の認証と得度式の写真があれば、僧名への改名は簡単にできるという。悪人は、別名を名乗って、僧侶になりすますのだ。
 不活動法人が乗っ取られ、ラブホを経営していたなんてニュースもあった。が、それ以上にこの事件が生々しいのは、れっきとした僧侶が犯罪に加担し、「得度」といういわば出家の本懐が犯されたことだ。ニセの剃度作法をどんな顔をして、彼らは撮っていたのだろう。
 「一日出家」とか「在家僧侶」とか、その手の広告をよく見かける。「僧侶体験」なんて観光寺院だってやっているが、残念ながら、真正直に信じるのでなく、きちんと精査しなくてはならない。
 では、どう対策をすればいいのか。不活動法人を解散させるのは宗派の役目だが、住職はいなくたって、先祖は残る。無住の寺を年老いた檀家が必死の思いで支えているのだ。そこに行政の関与を促せば、信教の自由は間違いなく阻害されるだろう。
 中島教授は「宗派とか寺だけの問題ではなく、われわれ自身の権利の問題。みなで考えなくては」と警鐘を鳴らすが、うーむ、これを自分ごととして、いったいどれだけの日本人が考えているのだろう。
 そんな寺をどう維持・再生するのか。檀信徒教化とか社会貢献とかとはまったく別の視点から、「生き残り」のプランは必須ではないか。そう感じるのだ。