もうひとつの終活。 お寺に、お葬式の予約をする。

(2017年08月17日 更新)

長くお寺をしていると、思いがけないご縁に恵まれます。突然「永代供養のお墓がほしい」と訪れたTさんのことです。

定年まで役所に勤め上げたTさんは、68歳の独身。いまは元気だが、親友が急死して以来、終活の必要を感じてきたといいます。「葬儀には妹や甥っ子や、役所の同期にも来てほしい」が、独り身であるから、そういった死後の手続きを誰かに委託しなければならない。そう思案してきたといいます。

「おもしろいことやっているお寺だなぁ」と、定年間近になってから應典院に何度か通っていたようです。「應典院の2階から大蓮寺のお墓が見える。墓碑と石垣と広々とした緑があって、いいなぁと」。そして3年前の夏、大蓮寺で開催したエンディングセミナーで、初めて「生前契約」なる仕組みがあることを知ったといいます。
 
NPOりすシステムの説明会に参加して、死後事務の委託契約では、葬儀や墓、供養についてお寺に委託しようと気持ちを固めました。Tさんは、そこで初めて大蓮寺を訪れたのです。「私ね、こちらでお墓もいただきたいし、お葬式も人並みでよいのでお願いしたい。安心だから」。そう言って、旧知の友人のようににっこり笑うのです。

Tさんからこれまでのいきさつを聞いたのは、その時が初めてです。應典院や大蓮寺に通っていたことを私は知りません。しかし、Tさんは間違いなく、うちのお寺でご縁を探していたのでしょう。ネットに情報はあふれているが、彼はお寺で縁に出会い、確かに選んだのです。きっかけは「おもしろそうなお寺」が、そこにあったから。それ以外にありません。

3年後、大蓮寺の五重相伝にはTさんの顔があるのでしょうか。今からその日が、楽しみでなりません。