自利利他円満。 大谷翔平はなぜゴミを拾うのか。

(2021年11月29日 更新)

私もそうですが、世にウォーキングやストレッチなどを日課にしている人は多いと思います。自分の健康増進あるいは維持のため日課は大流行りですが、では自分のためだけでなく、誰かのためにもなる日課となるといかがでしょうか。

今年最高に旬な人、の大谷翔平の日課はなんと「ゴミ拾い」だそうです。フォアボールで1塁に歩かされる間にもひょいとゴムを拾う。高校時代からの日課だそうで、これを毎日くりかえし、やがて自然な行動や態度になったのでしょう。大スターのゴミ拾いだけで驚きますが、その目的が「他人の幸福を拾う」だそうで、二度驚かされます。

私の友人で一日5回以上、相手の目を見て「ありがとう」を言うことを日課にしている方がいます。言われた方はうれしいし、言った本人も気持ちがよい。ささやかですが、そうしたちょっとした日課が周りに人や家族を幸せにします。元気や安心を与えます。

仏教では「自利利他円満」という言葉があります。

「自利」とは、自らの悟りのために修行し努力すること、「利他」とは他の人の救済のために尽くすこと。この二つは別々のものではなく、共に完全に行うことが仏教の理想という考え方です。もっと簡単に言えば、相手の幸せや安心のために日課に努めることが、結局自らの利益にかなう、ということでもありましょう。

浄土宗の数珠を、正式には日課念珠といいます。毎日南無阿弥陀仏を日課にするための道具ですが、それは同時に阿弥陀様とのご縁に感謝するしるしでもあります。自分の力で念仏申している「自力」ではなく、ご仏縁によって、他力によってお念仏させていただく、そのよろこびを周囲の人々とわかちあう。お念仏に限らず、すべての日課とはそのように努めていきたいものです。