変わらないために変わる。寺町の「格」を受け継ぐ。

(2026年05月07日 更新)

このたび下寺町24か寺で構成される大江組の組長という大役を仰せつかりました。組長というと厳しいですが、寺町全体の世話人であり、議長であり、会長でもあります。

大蓮寺から連なる下寺町は、400年以上の歴史を刻んできた格式ある街です。立ち並ぶ寺院の勇壮な瓦屋根、静謐な空気が漂う石畳。その街並みは「都心の寺町」として広く親しまれてきました。しかし、この街が真に「格」を有している理由は、単なる歴史の古さや景観の美しさだけではないように思います。

都会の喧騒の真ん中に、これほど多くの寺院が集まり、観光地でもないのに今も変わらず続いていることは、実はとても稀有なことです。ふとした折にお参りに来られる方々が、境内の木々を眺めたり、静かに手を合わせたりする。特別な日だけでなく、日常の営みの一部として、同じ場所を自然に共有している。この静かな時間の重なりこそが、下寺町の最大の特色ではないでしょうか 。

なぜ、都市の真ん中にお寺があるのか。効率や利便性が最優先される現代において、一見するとお寺は「不便な存在」かもしれません。それでもこの場所にあり続けてきたのは、人が立ち止まり、自分を見つめ直すための「余白」を必要としてきたからだと思うのです 。忙しない日々の中で一度足を止める。亡くなった大切な人に思いを馳せる。その一瞬の静寂こそが、いつの時代も私たちが守り、愛してきた宝物なのだと思います。

近年では、人形芝居フェスティバルのような寺町挙げた催しも増えました。若い住職たちが自坊で落語会やヨガ教室を開くなど、街に新しいにぎわいを生み出そうと情熱を注いでいます。これらも現代における寺町の新しい魅力の一つに違いありませんが、それもまた、日々の地道な信仰や暮らしの延長線上に、自然と生まれてくる、そんな「生きた伝統」が根底には流れています。

組長就任にあたり、私は「下寺町の格というバトンを次世代へつなごう」と呼びかけました 。これは古い形を頑なに守り続けることでも、無理に流行を追うことでもありません 。これまで大切にされてきた本質をしっかりと見極めながら、今の時代に合った形に少しずつ調え、柔軟につないでいく姿勢のことです 。

変化の激しい時代です。何もしなければ、周囲の変化に飲み込まれ、私たちが受け継いできた価値は薄れていってしまうでしょう 。だからこそ、「変わらないために、変わっていく」必要があるのだと感じています 。そのささやかな挑戦の積み重ねの先に、結果として下寺町の「格」が守られ、また高められていくと確信しています。