日本人と墓参り。先祖信仰とは、子孫招福。

(2022年12月19日 更新)

年末年始多くの日本人が「お墓詣り」と「初詣」を欠かしません。墓参りは実に日本人の90%が年一回行っているというデータもあります。では、なぜお墓参りをするのでしょうか。そこには日本人の篤い先祖信仰が込められています。

日本人の民俗学の大家・柳田國男は、「子孫がご先祖様をお祭りしなければ、「幸せ」は実現しない」(「先祖の話」)と説き、日本文化に影響を与えた儒教では、「先祖祭祀」「先祖崇拝」をすると、子孫に「福禄寿」(子宝、裕福、長寿)がもたらされる、という詩もあります。先祖信仰とは、つまり子孫招福のしるしなのです。

これが仏教的に正しいのかどうかは重要ではありません。お釈迦様も、自分の死後、墓など無用とおっしゃっていたのに、門弟たちはそれを背いてたくさんの仏塔を作った。供養を通して、残された者を見守ってほしかったのでしょう。

さて、大蓮寺のお墓の話に転じます。

「お寺の墓地が年々きれいになりますね」とお声がけをいただくことがあります。私の住職在任中に無縁墓の大規模な整備を行い、永代供養墓の建立やともいき堂の改修、このたびは掃除道具置き場も兼ねて東屋も2棟新築となりました(猛暑の日にはミストシャワーも噴霧されます)。お墓は少しでも美しい場所でありたいと思います。

当山の墓地は江戸時代に造営され、今尚800坪の広さを持つ市内有数の聖地です。背後に生玉の杜と勇壮な石垣が迫り、都心とは思えない自然と歴史が保たれています。

むろん少子化の影響は避けがたく、無縁墓は墓じまいもないわけではありません。ですが、それを転じて、お墓の美観を整え、誰にとっても親しみのある墓地として手を入れてきたつもりです。念入りに保守や清掃に従事してくれている寺族や職員にも感謝です。

墓地の主人公は、墓石それ自体ではありません。お墓があるからお参りされる多くの檀信徒様であり、その願いによって招来してくださるご先祖様のおかげなのです。