お盆なんて、知らない。 伝統を受け継ぐということ。

(2022年08月18日 更新)

先日、若者のお盆についての意識調査の結果が発表されました(2022年トレンダーズ)。15歳から29歳までの若者のじつに約4割が、「お盆が何をするための期間か知らない」そうです。「迎え火送り火」「初盆・新盆」「盆提灯」等々お盆用語を知る若者も、2割前後とか。すでにお盆が必ずしも伝統の国民行事であるとは言えないのでしょう。

そうはいっても、お寺の中から見ていると、今年もいつものお盆の光景と変わりありません。猛暑の中、お墓参りは絶えなかったし、棚経に伺えばご家族そろってお迎えいただきます。習慣として定着しているご家族と、そうでない人たちとの二分化が進んでいるのかもしれません。

これまで知らなかったかもしれないが、たいせつな人を失って初めて知るお盆の経験もあります。今年初盆(故人が初めて迎えるお盆)をお迎えになるご遺族のうち、少なからず若い世代がいらっしゃいます。これまでは両親に任せきりだった、これから自分たちが祀っていきたいので、一から教えてほしい。お仏壇や供養についていろいろお尋ねをいただくのですが、そういう真摯な態度に敬意を覚えるとともに、たいせつな人がお盆という伝統を教えてくれているのかと思います。

今頃はインターネットでなんでも調べられるので、知識や情報を得ることは手軽になりました。お盆についてもそうですが、しかし知っていることと、実際に行為として行うこととはまったく別物です。仏壇を祀る、お墓に参る、ご本尊を拝む等々、ふだんはあまりできなくとも、お盆だけは、そういった昔ながらの作法に準ずる方も多いことでしょう。精霊棚やら霊供膳や数々の盆飾りなど、確かに手間のかかることかもしれません。でも、知らないことでも、具現できる決まった型や様式があることは、じつは尊いことではないのでしょうか。若い人も、いつかそういう伝統を受け継いで、故人への思い、ご先祖への敬いの心を育んでいくのでしょう。

今年、3年ぶりの京都の大文字焼きが再開され、多くの観光客が集まりました。あれを巨大な送り火と知る人はどれほどいるかわかりませんが、しかし、そういう行事や風物にふれながら、人はゆっくりとお盆を体験していくのかと思います。