成道会。子どもに、何を伝えるか。

(2020年12月07日 更新)

大阪はコロナ禍が収まりませんが、この話題から少し離れましょう。大切なお話です。

 

12月8日はお釈迦様が悟りを開かれた成道会(じょうどうえ)。仏教系の幼稚園ではこれを記念して、牛乳を飲んだり、紙芝居を読んだり、いろいろと行事があるのですが、では、成道会とはいかなるものか、幼児にわかりやすく伝えることは容易ではありません。

先日、成道会を前に、年長5歳児の子どもたちに、私から大意こんなお話をしました。

 

 本当の道を求めてお釈迦さまは29歳で出家されます。それから厳しい苦行に身を投じるのですが、それでは何もわからないと思い、一人別の道を求めることにしました。
 やつれた体を娘さんから供養された乳粥 (ちちがゆ) でいやし、お釈迦さまは大きな菩提樹の下で瞑想の修行に入りました。
 瞑想中、お釈迦さまの心の中にいろいろな悪魔(煩悩)が姿を現し、誘惑したり、たぶらかしたり、脅したりしますが、その一つひとつに打ち勝ち、ついにある日、お釈迦さまは本当に大切なことに目覚めます。
 それは、私は自分一人の力で生きているのではない。あらゆるものはつながりあい、お互いを支えている。私は大きなつながりに中で生かされている、というものでした。
 その大いなる気づき、お釈迦さま35歳のお悟りの日、12月8日を記念して、この日を成道会というのです。

 

これを紙芝居を用いながら伝えるのですが、20分もの間、しっかりと聴いてくれる子どもたちの真摯な姿に驚かされます。
私はこの伝記を通して、3つの大事なことを強調します。
一つは「人は何かを求める。そのために努力する」こと。求めると欲しいは違う。かしこい子どもになりたいと求めるならば、そのように努力する。励みの心がたいせつ。
二つは「自分の中にも邪悪な心がある。それをしっかり見つめ、負けないようにする」こと。嘘をついたり、悪口を言ったり、怠けたりサボったり、そういう心は人間であれば誰にでもある(園長先生にもあります)。大切なことはそれを自覚して、そういった邪悪な心に打ち勝つ、強い心をつくること。
三つめは「自分一人で生きているのではない。みんなのおかげで生かされている」こと。君たちはお父さんお母さんがいて生まれてきた。お友だちがいるから、一緒に歌を歌うことができる。がんばることができる。自分一人で生きているわけではない。多くのおかげをいただいていることに感謝する。
三つとも難しい話ではありません。子どもにもわかる話ですが、しかし、それを大人は理解しているでしょうか。そのように考えることができるでしょうか。
子どもたちを前に、いつも私はわが身を正されるのです。
成道会とは子どものお祭りではありません。子どもという無垢な存在を通して、私たち大人の生き方、ありかたを見つめ直す大事な機会でもあると思います。