ともに生きる仏教。活発化するお寺の社会貢献活動。

(2019年04月19日 更新)

ちくま新書「ともに生きる仏教」新刊を記念して4月6日、應典院にてシンポジウムを開催、地域社会活動に取り組む8名の僧侶や研究者と共に語り合いました。新書では第8章を私が執筆しています。

東日本大震災以来、お寺の社会貢献活動が注目されるようになりました。その活動は震災復興からホームレスや自死遺族支援、福祉、教育など多岐に渡ります。歴史や場所、あるいは供養などお寺ならではの資源力を活かして実績を積み上げており、同書でも関西圏の7つの活動を取り上げています。

一例だけ挙げると、浄土宗滋賀教区青年会が取り組む「おうみ米一升運動」は、米産地である近江一帯の寺院が檀信徒より寄贈されたお米を取りまとめ、被災地へ、また貧困家庭へ届ける活動です。昔からある布施米の現代版ですが、その精神は伝統的な互助、共助とも言えるでしょう。

僭越な言い方ですが、「お寺の社会貢献」の先駆として、これまでも大蓮寺や應典院の活動はしばしば注目されてきました。特に22年の活動実績を持つ應典院は、同書に登場する僧侶たちにも少なからず影響を与えているかもしれません。私の原稿ではその長年の歩みと、「寺を開く」意味を問うています。

しかし、改めて噛みしめたいことがあります。評価や関心をいただくのはありがたいのですが、「お寺の社会貢献」とは高い位置から恵んであげるのではなく、「救う・救われる」関係を超えた「共生の行為」でなくてはならない点です。社会のニーズに応えつつ、ともに生きるため、ともにする、ともにある。それこそが本質に他なりません。法然上人の教えを借りれば「凡夫が凡夫に寄り添う」のです。

お寺にも新書はあります。ぜひお手に取ってみてください。