西郷隆盛と郷中教育。 明治150年から学ぶもの。

(2018年03月12日 更新)

 NHKの大河ドラマ「西郷どん」が始まりました。隆盛の少年時代の回では、彼を育てた「郷中(ごじゅう)教育」が紹介されています。郷中教育とは、方限(地域のエリア)ごとに6歳から15歳くらいの少年が集まり、そこに年上の先輩がついて行なう自習システムです。薩摩藩独自の制度で、そこから大久保利通、東郷平八郎ら明治維新の立役者が多く輩出されています。

 郷中教育では徹底した口述対話が重視されたといいます。子どもは、早朝からひとりで先生の家に行って儒学や書道などの教えを受け、次は子どもだけ集まって車座になり、今日学んだ内容を持ち寄り口頭で発表しあいます。決まった教室もテキストもない、思想的な統一や矯正もない。いい意味で多様性が担保されていて、そこでは互いに綿密な「チェック」や「シェア」が行われたと言います。

 教育改革の進む現代、これまでの知識や技術中心の教育ではなく、自分で考え、自分で解決する主体的、能動的な学びが求められています。「国語」「算数」といった学科主義ではなく、例えば「人間関係形成能力」「問題発見能力」等、その多くは他者コミュニケーションが原則であり、そこから対話や協働、自信・自尊感情を産み育てることになると言われています。その源流に、郷中教育はあったのではないでしょうか。

 隆盛の子ども時代、学校組織ありきではなく、無垢な興味や関心を受け止め、それをともに育む大人と地域の存在がありました。子どもを地域の宝として本気で育てる大人がいました。

今年は明治が始まって150年。今、教育改革が進むなか、私たちの実践の中に「温故知新」の心を見出していきたいものです。