現代人は深く淀んだ「渇愛」の海に漂泊している。本書はその現実を見据え、震災後の復興する日本人の心と社会の再デザインを簡潔に提言する。
震災による苦しみを襲うのは「第二の矢」。そして「思いがけず芽生えた感謝、優しさ」を慈悲へと育てていく方法。かくして本当の幸福と安らぎという心の転換が得られる。
第二の矢とは「心の中で起こる否定的感情」の増殖。この「心の二次被害」をどうくい留めるか。またボランティア活動中に生じる「優しさ」には果たして相手への「支配欲」が無意識に伴ってはいまいか。
他者と自己を拝める利他心の中にしか慈悲は実現しない。そして問われるのは幸福感を「快感原理」によって計測している現実。故にまず現代情報化社会のあり方がいまこのチャンスに根底から見直したいと主張する。
3・11後の世界の心の守り方―「非現実」から「現実」へ―
小池 龍之介 著
●ディスカバー・トゥエンティワン(2011年/1,000円+税)
(初出:2012年春 サリュ・スピリチュアルVol.5)