苦縁 ─ 東日本大震災 寄り添う宗教家たち ─ 北村 敏泰 著

「震災を受けて社会に必要なものを一文字で表現すれば」「一位は『絆』、次いで『愛』」だった。そして直ちに救援に立ち上がった宗教者には「苦縁」の二文字が「新たな縁」、寄り添いの支柱となった。天理大学教授・金子昭はそこに「互いにスピリチュアルに成熟した人間的相互関係として形成される『宗教的縁』」を見いだし「信仰の深化」を求める。
 無縁はない。すべてが有縁だ。それ故宗教者たちは「超宗派」で行動する。供養、慰霊、傾聴、相談、生活援助…。諸行無常を高見から説く人をやめ、被災者たちの「悲しむ力」に寄り添う。曹洞宗・金田諦應住職はある日、相対的認識を超え、「私とあなたの区別が消滅」、「神仏の力」その命のつながりを強く感じたという。
「願わくはこの功徳をもって遍く一切に及ぼし、我らと衆生みな共に『霊縁』を成ぜんことを」

苦縁 ─ 東日本大震災 寄り添う宗教家たち ─
北村 敏泰 著
●徳間書店(2013年/1,900円+税)

(初出:2014年春 サリュ・スピリチュアルVol.8)

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