東日本大震災発生の11ヵ月後、政府はやっと復興庁を発足させた。
本書は奇しくも震災の一ヵ月前に「心の復興庁」を立ち上げ、発信された。
すべてが「システム化」によって管理された社会、そこに機能するのは縦軸のみだ。横軸という縁起(仏縁)の世界は排除されている。しかしそこにこそ人の生き筋がある。縦横斜めの軸に息づく真の日本文化、日本仏教の再発見と実践が今程求められている時はない。
二人は見失われた横の文化を探る。「仏教の場合、因果が縦であ」り「横の発想が縁起だ」として、禅は両行に生きると玄侑。浄土仏教はやはり法然親鸞の「自然法爾」に尽きると釈。
対談の最終で「江戸の閉じ方」に着目し「適度に閉じたコミュニティ」は「東北にひとつのモデル」が見出せるとの指摘は復興への大いなる暗示と言える。
自然を生きる
玄侑 宗久・釈 徹宗 著
●東京書籍(2011年/1,500円+税)
(初出:2012年春 サリュ・スピリチュアルVol.5)