社会をつくる仏教 ― エンゲイジド・ブッディズム ― 阿満利麿 著

1963年、タイの高僧ティク・クァン・ドゥクが焼身供養をした。カバーデザインにその衝撃のシーン。
日本語に定着していないエンゲイジドとは「行動する」「社会参加する」「闘う」と訳され、閉鎖的なスピリチュアルを抜け出しソーシャルな側面が強調される。
著者は鎌倉新仏教の法然、親鸞の社会性を見直し、近代では『歎異抄』を再発見した清沢満之、真宗実践派の高木顕明、京極逸蔵らが果たした仏教の社会参加を振り返りつつ、「宗教はややもすれば、愛国心や仲間意識の補強、体制の擁護、個人的な癒しに終る」けれど「本来はそうした国家や民族、利害を守るための共同体を相対化し、人間がもっとも人間的に生存できる世界」の構築をめざすのがエンゲイジド・ブッディズムだと結語する。

社会をつくる仏教ーエンゲイジド・ブッディズムー
阿満利麿 著
●人文書院(1,800円+税)

(初出:2010年秋 サリュ・スピリチュアルVol.2)

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