「死生観について書くことを目指したのではないさまざまな文章やテクストから、人生の歩みから、あるいは芸術・技芸・造形物などから」「近代的『日本人の死生観』を読みと」ろうとする本書に登場するのは儒教・武士道の立場にある加藤咄堂、民俗学・神道の柳田国男・折口信夫、仏教やキリスト教、教養主義の宮沢賢治(『ひかりの素足』)、志賀直哉(『城の崎にて』)、終戦間際「戦艦大和」に乗り込んでその最期を見届けた吉田満、「がん」闘病で死と対峙した岸本英夫、高見順…。
それぞれが感じとった死生観に共通するものは、肉体消滅の後にまぎれもなく存在する「自らの生の全体と大きな世界(宇宙)そのものの実在性」への願望ないしは不変の「生の元型」への目覚めではなかったのか。
日本人の死生観を読む ─ 明治武士道から「おくりびと」へ ─
島薗 進 著
●朝日新聞出版(2012年/1,400円+税)
(初出:2013年夏 サリュ・スピリチュアルVol.7)