新・お葬式の作法 ― 遺族になるということ ― 碑文谷 創 著

葬儀のあり方の変遷を知ると、時代の背景と様相が浮彫りとなる。
高度経済成長期には地域の習慣によるかつての葬送儀礼が合理化され、バブル経済崩壊によって90年代以降は葬儀の多様化が進んだ。晩婚化、非婚化、家族の崩壊、少子多死社会、価値観の多様化は死の儀礼を単なる「死体の処理」と扱うことを肯定した。それらの現象はよく言えば「個性化」だが、家族の分散・解体、高齢者の増加で直葬や散骨という葬送の簡略化が進めば、「死者を想う」心は確実に欠落していく。そこには「きわめて人間的な」弔いの作法はない。極端な葬式の簡略化は「死者とのつながり」を分断するのだ。
生老病死のプロセスを踏まえない現代の死生観に「一抹の危険性を感じている」著者は、今こそ「葬式の作法」をしっかり学習し、遺族本来のあり方を取り戻そうと訴える。

新・お葬式の作法 ― 遺族になるということ ―
碑文谷 創 著
●平凡社新書(2006年/740円+税)

(初出:2011年冬 サリュ・スピリチュアルVol.3)

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