90年代に入り、多くの人が「何かがおかしい。…何かが狂ってしまったのではないか」(『日本型システムの崩壊』)と感じ出した。社会の「意図」するものとその目的を「効率化合理化」する生き方は「人の使い捨て」「個人の自発性と疎外」にのみ費やされた。
そこには「すでに国策がこう進んでいるのだから、『私にやれることは何もない』」の認識による「場の論理」が絶対視され、その「空気」にNOを突きつける勇気も出ない。それが「愛の不足」「個の疎外」を培養した。何か事が起これば「忍耐」し「がんばろう」スローガンで問題を先送りし続ける。これは日本人の「得意分野」。この仕組が東日本大震災にも現われた。
だから著者は怒る。今こそ最も「不得意分野」、ダライ・ラマも「有益」と認めた「慈悲の怒りに目覚めよ!」と。
慈悲の怒り ─ 震災後を生きる心のマネジメント ─
上田 紀行 著
●朝日新聞出版(2011年/1,000円+税)
(初出:2011年冬 サリュ・スピリチュアルVol.4)