思想の身体 ─ 死の巻 ─ 中村 生雄 編・著

「新しい思想史、文化史、精神史への手応えある展望」を全九巻にまとめた「死の巻」には五つの論文と対談を収録。宗教学、象徴人類学、哲学、社会学、医学など様々な角度から現代と将来の死と生のあり方を探究する。
先祖の存在とその接し方、家から近親追憶的祭祀という葬送習俗の変化。「死者の側の主導権を尊重する」その絆の再生。葬儀・墓・仏壇という文化の継承の断絶がもたらす「死者へのまなざし」の喪失。学徒兵の愛国精神と死の超克。
環境変化による宗教的倫理的「共生」への目覚め、それを契機とした「五蘊無我」の自覚から、生死の基底にある祖霊信仰は甦るのか。今こそ医療システムが信じる肉体死(延命観)のみ見つめる物質科学観を脱し、もっと豊穣な霊性を感得したい。

思想の身体 ─ 死の巻 ─
中村 生雄 編・著
●春秋社(2006年/2,000円+税)

(初出:2013年夏 サリュ・スピリチュアルVol.7)

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