現代仏教の課題解決の糸口は仏典=古典の緻密な再読にある。
仏陀入滅後、遺言書の『遊行経』を原点に『無量寿経』『法華経』『般若心経』そして日本伝承を仏教説話化した『日本霊異記』など多様な仏典が編まれた。すべては仏陀の死から始まリ、その軸足は個人救済の小乗から社会救済の大乗へと移る。
経典解釈に多くの宗派祖師達が登場した。平安期の景戒、最澄、空海、鎌倉期の法然、親鸞、道元、日蓮、江戸初期のハビアン。祖師達の著作と生き様、時代背景を詳細な考証で解釈批判を加え、「思想領域」と「民間信仰や習俗、社会制度領域」の二層合体という仏教本来のあり方を見直す。
仏典は難しく抹香臭いという現代人に人生の新しい意義を見出させてくれる。
仏典をよむ ― 死からはじまる仏教史 ―
末木 文美士 著
●新潮社(1,700円)
(初出:2010年冬 サリュ・スピリチュアルVol.1)