ルポ 仏教、─ 貧困・自殺に挑む ─ 磯村 健太郎 著

ネットで集まった「指導者なき」ウォール街大規模デモは「政治経済による貧困」の是正を訴え、やがて日本にも波及するという。
さて本書では、その貧困・自殺問題に仏教徒はいまどうあるべきかをルポ形式で問い、その実態に迫る。
本書には「宗派を超えた」12人の僧侶たちが登場。僧侶たちの多くは自らも苦悩を抱えつつ、他の魂たちに寄り添い、見守り悲しむ菩薩なのだ。
ひたすら「傾聴」する僧侶真壁太隆さん、路上生活をしたことで相手の「目の高さで触れ合」える川浪剛さん、「死にたい」は強く「生きたい」のメッセージと受け止め、自殺を防ごうと務める藤澤克己さん…。
勝ち組負け組の篩にかかって社会の底辺で苦悩する人々が直面する貧困・自殺の前には「一切の生きとし生けるものは幸いなれ」の叡智と慈愛しかあるまい。

ルポ 仏教、─ 貧困・自殺に挑む ─
磯村 健太郎 著
●岩波書店(2011年/1,900円+税)

(初出:2011年冬 サリュ・スピリチュアルVol.4)

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