ビッツバーグ葬儀科学大学卒業後、カリフォルニア州の葬儀社インターンシップを経て、エンバーマー(遺体修復士)となった著者は、阪神・淡路大震災でも活躍。その存在や業績は、マンガ『死化粧師』とそのテレビドラマ化で広く知られた。
本書は、多くの遺体修復の場に立ち会い、死の「悲しみの儀式」の大切さを身につけた著者が、最愛の人や親しい友人を失った「遺族の心へ向きあ」い「悲しみを癒すこと=グリーフケア」に「生涯のテーマを見つけた」背景とその理由が豊富な事例と併せて提示。葬送儀礼の変化で、従来の「家族が囲んで死を看取り」悲嘆にくれる厳粛な習慣は、もはや消失しつつある。
仏像ブームの背景に浮かび出た葬式不要論などにも疑問を呈しつつ、葬儀は単なる「死者の埋葬だけでなく、神聖なグリーフケアの一環という」視座で、その本質を見極ようとする。
お父さん、「葬式はいらない」って言わないで
橋爪 謙一郎 著
●小学館101新書(2010年/720円+税)
(初出:2011年冬 サリュ・スピリチュアルVol.3)