【ブック】未来へ命をつなぐ「給食の歴史」

「給食の歴史」 藤原辰史:著

給食には少年時代それぞれの思い出があるだろう。牛乳にせよコッペパンにせよスープにせよ、私たちのような世代にはある種の喜びと切なさがまじりあっている。本書はその学校給食がいかに戦後政治のなかで翻弄されてきたかをあらわした好書だ。
本の終章に「世界現代史の中における日本の給食の位置づけ」として3つあげられている。第一に共産主義との関係抜きに給食の歴史は描けない。第二に米国の日本の『給食』のための小麦戦略はアメリカの一方通行ではなく日本側との共同作業であったこと、第三に新自由主義との兼ね合いである。詳細は本書に譲るが、占領下にあって米国が給食の充実と取引になにを求めたのか、戦後の隠された政治が読み取れる。
しかしながら、給食こそ社会正義の賜物でなくてはならない。現代は子ども食堂が話題だが、子どもの貧困に対しては、まず学校給食の浸透が先決であるという指摘にもうなずける。

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