【シネマ】嘘の上塗りで、失敗。「鈴木家の嘘」

「鈴木家の嘘」

評判がいいので、新人監督の映画「鈴木家の嘘」を観た。息子の自死を知らない母親に、真実を隠し通すための家族のあれやこれやを描いた微妙な喜劇なのだが、どうにも嘘が嘘に見えない。脚本や芝居のマズさもあるが、日本映画で悲しみを「言葉(セリフ)で綴る」限界を見せつけた感じがする。自死とか遺族が抱く喪の感情を、芝居だけで見せるには、時代がもう受け入れられないのだろう。コウモリの場面など、失笑してしまった。
日本人の悲しみは、風景に溶け込んでいる。現代の家族においては、もはや虚像なのだ。東北の被災地と新宿を行き交うデリヘル嬢を描いた「彼女の人生は間違いじゃない」(廣木隆一監督)に遠く及ばない。
(2018年・日本映画)

http://suzukikenouso.com/