ノンバーバル・コミュニケーション。身体文化を大切にする。

(2018年10月15日 更新)

8月の終わり、幼児教育の本家、ドイツを訪れました。いろいろな幼稚園を視察して、驚くことが多かったのですが、同時にそういう文化差から日本固有のあるべき姿にも気づかされました。

その一つが身体文化です。子どもの文化の違いは、知識の違いというより習慣的なものとして身体作法に現れることが多い。運動や体育ではありません。多くは私たちが無意識のうちに生活で用いている所作やふるまいです。

たとえば坐法。椅子の文化である欧米には、座法というものは存在しません。アジア圏にはいくつかありますが、正座は日本だけの文化です。また同じ椅子を使っていても、姿勢にこだわるのも日本特有のものでしょう。当園の子ども用椅子には背もたれがありませんが、これも腰を立て、背筋を伸ばすための工夫があります。
瞑想もそうです。今はマインドフルネスがブームですが、源流はブッダ以来2500年の仏教の身体技法でもあります。以前脳科学者の先生が、当園で瞑想後の活動における子どもの脳活動を調べたことがありますが、顕著な活性化を示しました。
さらに給食時の食作法。食前後のことばや黙食など、単なる食事マナーとは異なる独自の文化があります。

このように日本人であればごく普通に習慣として馴染んでいるもの、すぐ再生可能な作法を「身体文化」といいますが、最近は生活環境が欧米化することで、次第に劣化してきていることも事実でしょう。上の年齢になるほど、周囲は消費優先となって、「なるべく身体を動かさない」生活が主流となっているからかもしれません。身体文化は幼少期にこそ、しっかりからだの中に埋め込んでいかなくては定着は難しいのです。

グローバル化が進むほど、自身のアイデンティティが求められます。情報や知識はすごいスピードでシェアされていきますから、最後に残るものは固有の身体だけです。自身の身体でどのように自分らしさを表現することができるか。言葉だけに頼らない、ノンバーバル(非言語)・コミュニケーションがますます関心を集めることでしょう。
伝統の型や様式をだいじにしたい。単なる懐旧からではなく、それがグローバル社会に向けて、人を育てる基本となるからなのです。