應典院20周年。 宗教の社会の関係を紡ぎ直す。

(2018年03月26日 更新)

3月2日、應典院にて再建20周年記念のシンポジウムが開催されました。日本の宗教学の碩学、東京大学名誉教授島薗進先生をはじめ、錚々たるゲストの方々とこの20年を回顧する場となりました。

大蓮寺塔頭應典院が本寺創建450年記念事業として落慶したのは平成9年、1997年のこと。そこに至るまで、当時の檀家総代様と建築関係者らによる再建委員会の議論や、多数寄せられたご浄財など、20年前の思い出が蘇ります。異貌のお寺ではありますが、大蓮寺の歴史と伝統に鑑みて、寺檀が一体となって取り組んだ一大事業でした。

当時の世相はまさに世紀末の様を呈していました。阪神・淡路大震災とオウム地下鉄サリン事件が起きたのが95年。翌年には宗教法人法が改正され、97年には神戸連続児童殺傷事件が発生、学校現場では「心の教育」が叫ばれていました。
 
言い換えれば、その時代背景には宗教に対する不信や不安の急激な増大があり、それに応えるように再建されたのが應典院でした。

そもそも、かつてお寺とは公共的な広場であり、「学び・癒し・楽しみ」、現代的には教育、福祉、芸術文化といった公文化の祖型の役割を担っていました。また、「無縁所」と言われたように、生まれや身分に関係なく、誰をも受け入れるアジールとして存在もしていました。應典院の出発点において「葬式をしない」と宣言したのは、そういった寺院の原点を取り戻そうとしたからです。

振り返ればもう20年。今では宗教の公共性や社会貢献が注目されるようになりました。應典院の足跡とは、つまり宗教と現代社会の関係を紡ぎ直す作業だったと言えるのかもしれません。20年を終え第2期となる應典院の、今後の活動にご期待ください。