まわしよみ新聞。お寺で生まれたコミュニティメディア。

(2018年06月19日 更新)

「まわしよみ新聞」という話題の社会実験はご存知でしょうか。参加者が新聞を持ち寄り、めいめいに記事を切り貼りして、自分編集の紙面を作るコミュニティワークです。先週、その要領をまとめた「まわしよみ新聞をつくろう!」(創元社)が出版されましたが、その発祥は2012年應典院からと同書にあります。

中身は同書に譲りますが、この稀有なコミュニティワークは釜ヶ崎で注目され、その後、勝手に全国に広がり、小・中学校や大学、役所や劇場、お寺など地域をつなぐ新しいオープンソースになっています。すでに高校教科書で取り上げられていますが、これからはアクティブラーニングの恰好のツールとしても活用されるでしょう。

作者の陸奥賢さんは「奇才」と呼ぶにふさわしい人です。私が出会った頃は、「街歩きのお兄さん」だった風体も年々無頼度を増して、それと並行するように、数々のコミュニティワークを應典院で発表してきました。推測ですが、應典院という場から得た、死者や冥土のイメージが彼のワークに拍車を掛けたのではなかったでしょうか。

私が思い出すだけで、亡者の思い出を語りながら、供物を皆で食する「葬食」、ナマズ、カメ、クジラなど生類を憐れむ?「いきものがかり」、失敗や喪失を語り合い自己開示を交わす「当事者研究スゴロク」等々、ちょっと推し量り難い内容ばかりですが、密かに生と死を下地にしていることがよくわかります。

「まわしよみ新聞」はそんな陸奥さんの数あるコミュニティワーク(アート)の一つに過ぎません。一つの傑作の足元には、日々の試行錯誤があることをもちろんですが、私には陸奥さんの死者を思う「供養の心」が今回の出版につながったと思えるのです。

↓まわしよみ新聞のサイト
http://www.mawashiyomishinbun.info/