〈映画評〉〈死者供養〉の日常を描く傑作。「海街diary」

 「誰も知らない」「そして、父になる」で国際的に評価の高い是枝裕和監督の傑作である。一貫して日本の血族のありようを描いてきたこの監督の、現段階での頂点といえるだろう。同時に、日本において伝統的な死者供養というものが、強く家族の関係性をつなぎなおしてきたことについても思いを新たにする。

 鎌倉で暮らす三姉妹のもとに、15年前に姿を消した父親の訃報が届く。山形の葬儀場に出かけると、父が他の女性に産ませたという高校生の異母妹と対面する。身寄りを亡くしながら、気丈にふるまう彼女に、姉たちは鎌倉で一緒に暮らさないかと持ちかける。やがて、四姉妹の鎌倉での生活が始まり、4人の女性のそれぞれの生き方が描かれる。

 映画は父の葬式に始まり、身近な人の葬式で終わるのだが、それ以外にも、異母姉妹で赴く墓参り、離縁した母と再会する法事、さらに姉妹たちが暮らす日本家屋の中心に据えられた仏壇など、随所に死者供養の場面が映し出される。姉妹は父母に捨てられた身の上なのだが、そういう場面が巡るごとに、不在となった肉親への情愛や追慕の念が込み上がる。とりわけ「やさしかったけど、ダメな人だった」父親に対する親愛の情は、死者であるが故の赦しと受容を含んでいる。日本人はそうやって生前の関係を、死後受け継いで紡ぎ直してきたのだろう。

 小津であればそれを無常観に高めていくのだが、是枝は異母妹の高校生を巧みに希望へのたつきとして描き、成功している。桜並木を行く自転車のシーンは圧倒的に美しい。

四姉妹の女優陣は私から見ればタレントさんなのだが、名監督の腕によれば記憶に残る妙演となった。さらに古都鎌倉の四季が美しい。

 近頃、伝統的な死者供養に対し、懐疑的な声をこぼれ聞く。そういう人には、この映画をぜひ薦めるといい。(2015・日本映画)

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大蓮寺住職、應典院代表

秋田 光彦

1955年大阪市生まれ。

明治大学文学部演劇学科卒業後、東京の情報誌「ぴあ」に入社し、主に映画祭の企画・宣伝を担当。退社後、映画制作会社を設立、1997年に劇場型寺院應典院を再建。

以後10数年間にわたって、市民、コミュニティ、地域資源のあり方を具体的に提案し、実践し、市民活動や若者の芸術活動を支援してきた。また、人生の末期を支援するエンディングサポートをNPOと協働して取り組むなど、「協働」と「対話」の新しい地域教育にかかわる。パドマ幼稚園園長、総合幼児教育研究会代表理事、相愛大学客員教授など兼務。まちづくりからコミュニティシネマまで活動範囲は幅広い。